在宅勤務の仕事へ転職する場合でも、障害への配慮は受けられます。ただし、在宅勤務そのものが当然に認められるわけではなく、仕事内容や障害の特性、会社の勤務体制などを踏まえて、会社と相談して決まります。
日本では、2024年4月から民間企業にも障害のある人への「合理的配慮」の提供が義務付けられています。配慮を求めるときは、できないことだけでなく、どのような方法なら仕事を続けられるかを具体的に伝えることが大切です。
在宅勤務への転職で受けられる可能性がある配慮
在宅勤務への変更や在宅勤務日の増加は、障害への配慮の一例になり得ます。ただし、職種によっては出社や対面作業が必要なため、会社が必ず在宅勤務を認めなければならないという意味ではありません。
たとえば、次のような配慮が考えられます。
- 勤務日数や頻度を調整し、在宅勤務を取り入れる
- 通勤ラッシュを避けるため、始業・終業時刻を変更する
- 通院日に休暇や勤務時間の調整を認める
- 指示を口頭だけでなく、メールやチャットでも伝える
- 業務の優先順位や締め切りを文書で共有する
- オンライン会議の録画、字幕、議事録などを利用する
- 休憩を取りやすくする
- 体調に応じて一時的に業務量を調整する
- 自宅で使う機器やソフトウェアを調整する
どの配慮が必要かは、障害の種類だけで一律に決まるものではありません。同じ障害名でも困る場面や必要な支援は異なるため、業務上の困りごとと対策をセットで伝えます。
在宅勤務が認められるかを左右する条件
在宅勤務の可否は、主に「その仕事を自宅で実施できるか」「会社が業務管理や情報管理をできるか」「在宅勤務で本人の負担が軽くなるか」などによって判断されます。
| 確認する項目 | 判断に関わる内容 |
|---|---|
| 仕事内容 | 現場作業、接客、設備操作など、出社が必要な業務が含まれているか |
| 勤務体制 | 完全在宅、週数日の在宅、原則出社など、会社の制度がどうなっているか |
| 障害による困りごと | 通勤、対人対応、音や光、疲れやすさ、体調変動など、どの場面に負担があるか |
| 業務への影響 | 在宅勤務により、連絡、納期、チーム作業を維持できるか |
| 必要な環境 | パソコン、通信環境、支援機器、静かな作業場所などを用意できるか |
会社側は、合理的配慮を検討するときに、業務への影響や費用、会社の規模なども含めて判断します。配慮の提供が事業に過大な負担となる場合は、希望どおりに対応できないことがあります。
その場合でも、最初から一方的に断るのではなく、別の勤務方法や業務上の工夫を含めて話し合うことが重要です。
転職活動では障害と配慮の希望を伝えるべき?
配慮が必要なら、応募先に障害の状況と希望する配慮を伝えたほうが、入社後の行き違いを減らせます。障害者雇用の求人では、配慮事項を確認しながら選考が進むことが一般的です。
一方、一般求人に応募する場合は、障害の詳しい内容をどこまで伝えるかを自分で判断する必要があります。ただし、在宅勤務や勤務時間の調整が必要なのに伝えないまま入社すると、会社が対応を準備できず、就業継続が難しくなる可能性があります。
伝える内容は、病名や症状の説明だけでなく、次のように仕事への影響を中心に整理します。
- どの業務や場面で困りやすいか
- 困りごとが起きる頻度や時間帯
- どのような配慮があれば業務を行えるか
- 配慮があれば担当できる業務の範囲
- 通院や服薬、体調変動による勤務上の注意点
- 緊急時に会社へどのように連絡できるか
配慮を伝えるときの具体例
「障害があるので在宅勤務にしてください」とだけ伝えるより、理由と代替案を具体化すると、会社が判断しやすくなります。
たとえば、次のように伝えられます。
- 「長時間の通勤で体調を崩しやすいため、週3日の在宅勤務であれば安定して働けます」
- 「音や人の出入りで集中が難しくなるため、集中が必要な作業は在宅で行いたいです」
- 「通院日は始業時刻を1時間遅らせることで、勤務を継続できます」
- 「口頭指示だけでは確認が難しいため、チャットやメールでも指示をいただけると対応できます」
- 「体調が急に悪化したときは、上司へチャットで連絡し、必要に応じて休憩を取る方法を希望します」
希望がそのまま認められない場合に備えて、「週5日の完全在宅でなければ働けない」のように固定するのではなく、可能な範囲で複数の案を用意しておくと相談しやすくなります。
求人票や面接で確認すること
「在宅勤務可」と書かれていても、完全在宅とは限りません。応募前や面接時に、在宅勤務の条件を具体的に確認してください。
- 在宅勤務は週に何日できるか
- 入社直後から在宅勤務が可能か
- 研修期間や試用期間は出社が必要か
- 月に何回、出社や対面会議があるか
- 出社先までの通勤時間や交通費の扱いはどうか
- 体調不良時に在宅へ切り替えられるか
- パソコン、モニター、通信環境を会社が用意するか
- 勤務時間中の連絡方法や休憩の取り方はどうなっているか
- 障害への配慮を誰に相談するか
特に「在宅勤務制度がある」と「自分の配属先で在宅勤務ができる」は別です。制度の有無だけでなく、応募する職種と配属予定の部署で利用できるかを確認しましょう。
在宅勤務の配慮を相談する手順
転職前に条件を整理し、選考中と入社後の相談先を確認しておくと、配慮の内容を決めやすくなります。
- 困っている場面を書き出す。通勤、職場の音、対面会議、体調変動など、仕事に影響する場面を具体的に整理します。
- 必要な配慮と代替案を考える。完全在宅だけでなく、週数日の在宅、時差出勤、休憩の調整なども候補にします。
- 求人票の条件を確認する。在宅勤務の頻度、出社日、研修期間、機器の貸与条件などを確認します。
- 応募先へ相談する。面接担当者や求人を紹介した支援機関に、障害による制約と希望する働き方を伝えます。
- 合意した内容を記録する。在宅勤務の頻度、出社の可能性、連絡方法、通院時の扱いなどを、メールや書面で確認します。
- 入社後に見直す。実際に働いて問題が出た場合は、業務への影響と必要な変更を整理して、上司や人事担当者へ再度相談します。
ハローワーク、障害者就業・生活支援センター、地域障害者職業センターなどに相談しながら転職活動を進める方法もあります。利用できる支援や対象者の条件は機関ごとに異なるため、相談時に自分の地域と希望する働き方を伝えて確認してください。
在宅勤務の配慮を断られた場合の考え方
在宅勤務を断られたからといって、直ちに障害への配慮がすべて拒否されたとは限りません。仕事内容や情報管理上の理由から、在宅勤務以外の方法を提案されることがあります。
まずは、次の点を確認します。
- 在宅勤務が難しい理由は何か
- 一部在宅や期間限定の在宅は可能か
- 時差出勤や短時間勤務など、別の配慮は可能か
- どの業務なら在宅で担当できるか
- 一定期間試行し、問題がなければ継続する方法はあるか
会社と話し合っても条件が整理できない場合は、転職エージェントや公的な就労支援機関に、求人選びや配慮の伝え方を相談できます。採用後のトラブルを避けるため、曖昧なまま入社せず、合意した勤務条件を確認してから判断しましょう。
在宅勤務への転職で障害への配慮を受けるためのポイント
在宅勤務への転職では、障害があることだけで在宅勤務が自動的に認められるわけではありません。一方で、仕事を続けるために必要な配慮として、在宅勤務や勤務方法の調整を会社へ相談することはできます。
最初に、障害によって困る場面、必要な配慮、配慮があればできる業務を整理してください。そのうえで、在宅勤務の頻度や出社条件を応募先に確認し、入社前に合意内容を記録しておくことが、無理なく働き続けるための第一歩です。







